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生成AIの社会実装を加速する「Meta Llama Academy in Japan 2025」を開催

Meta日本法人Facebook Japanは11月20日と21日の2日間にわたり、「Meta Llama Academy in Japan 2025」をMeta東京オフィスにて開催しました。

本イベントは、生成AIの社会実装を加速させることを目的とし、Metaが提供する大規模言語モデルLlamaの国内最大級となるハッカソンです。Llamaを活用し、日本固有の社会課題・産業課題を解決するユースケースを創出することを目指して企画されました。開発スキルや専門領域の異なる参加者が集まり、2日間で企画・開発・デモまでを作り上げる実践型プログラムです。

初日にはMetaのPartner EngineerであるRiandyが登壇し、Llama 4のMoE構造やマルチモーダル対応、安全性ツール群などの最新動向と、MetaのAI開発方針を紹介しました。次にAlgomatic Robotics CEOの​南里勇気氏より、生成AIを活用した事業​のアイディエーションに関する講演が行われました。続くユースケース講座では、​株式会社リコーのAIサービス事業本部 デジタル技術開発センターに所属する中村聡史氏が日本語特化LLMやオンプレミスソリューションの取り組みを、​株式会社スリーアップ・テクノロジー代表の​三上典秀氏がVLMを活用した工場DXやロボット制御の事例を紹介するなど、現場起点のユースケースが具体的に共有されました。最後に、シンガポールで行われたMeta Llama Incubator Programの優勝チームMyRepublic Head of AI & Transformationのケニー・イー氏から、中小企業向けの営業自動化ツールのソリューションが紹介されました。

2日目は各チームが終日プロトタイプ開発に取り組み、ハッカソン形式の最終ピッチを実施しました。3分間のプレゼンテーションとデモ、続く審査員からの質疑応答という形式で、全10チームがLlamaを活用した成果を披露しました。グランプリ・製造DX賞・ソーシャルインパクト賞・Meta特別賞など複数のアワードが設けられ、社会課題、産業DX、技術的先進性など多角的な観点から審査が行われました。製造現場の安全性向上、教育現場の長時間労働、日本語学習支援、保育や見守り、公共交通の混雑緩和など、各チームが提示したアイデアはいずれも「日本の現場起点」の課題に根ざしたもので、短期間の開発とは思えない完成度に会場は大いに盛り上がりました。

審査員は以下の7名が務めました(五十音順)。

  • 岡崎直観氏(東京科学大学情報理工学院情報工学系 教授)
  • シバタアキラ氏(Weights & Biases Japan カントリーマネージャー)
  • 庄司昌彦氏(武蔵大学 社会学部メディア社会学科 教授/武蔵学園 データサイエンス研究所 副所長)
  • 林英俊氏(製造DX協会 代表理事/株式会社エスマット 代表取締役)
  • 三宅俊毅氏(DEEPCORE, Senior Director, Investment)
  • Christopher Dewan(Meta ソフトウェアエンジニア, Recommendation Systems)
  • Riandy(Meta パートナーエンジニア, Gen AI)

Llama活用の実装可能性が示されたピッチセッション

開会にあたり、経済産業省AI産業戦略室長の渡辺琢也氏からメッセージが寄せられ、「日本が抱える社会課題の解決にはAIの活用が不可欠であり、オープンソースAIは知見の共有とイノベーション加速の基盤になる」と強調しました。特にLlamaについては「日本で生成AIに挑戦する人材を後押しする存在」と述べ、今回の取り組みから新たなアイディアや技術が生まれることに期待を示しました。

グランプリは、製造現場の安全確認「指差し呼称」をLlamaでアップデートするコパイロット ヨシコさんを開発したチーム9が受賞しました。

製造現場では「〜ヨシ」と声に出して指差し確認をしても記録が残らず、実際の手順遵守が管理者から把握しづらいという課題があります。チーム9はこの「ヨシ」という掛け声をトリガーに、カメラ映像と音声を同時に記録し、登録済みの作業手順書と照合する仕組みを構築しました。Llamaとマルチモーダルモデルを組み合わせることで、

  • 指差し呼称の瞬間の作業内容を自動記録
  • 手順抜けや順序違いをその場で音声フィードバック
  • 作業履歴を管理画面からトレース可能

といった機能を実現しました。

審査員の三宅氏は「新卒で製造業にいた頃、『ご安全に』の掛け声とともに指差し呼称を徹底していた。当時の“気持ち”とプロダクトがうまく噛み合っている」と述べ、人の感情と現場文化を丁寧に汲み取った点を高く評価しました。

イベントを総括し、Meta 日本法人Facebook Japan 公共政策部長の小俣栄一郎は、本イベントの意義をあらためて参加者へ伝えました。

短期間でプロトタイプを形にし、社会課題と向き合いながら発表に臨んだ参加者の姿勢に強い感銘を受けたと述べ、「技術だけでなく、どの課題に向き合うのか、どんな問いを立てるのかがこれからますます重要になる」と語りました。

また、Metaが提供するオープンソースAIや、今後普及が進むAIグラスをはじめとするウェアラブルデバイス(現時点で日本では未展開)と組み合わせることで、より多様なユースケースが生まれる可能性にも言及しました。

「今回生まれたアイデアの数々は、日本の社会をより良くするための大きなヒントになる」とし、未来への期待を込めてイベントを締めくくりました。

参加者同士の対話から新たな視点が生まれ、現場起点の課題とAI技術が結びついた2日間となりました。

【審査結果】
グランプリ(賞金50万円)
チーム9:製造現場のコパイロット「指差し呼称コパイロット ヨシコさん」
【受賞コメント】
グランプリを受賞したチーム9のメンバーは、「日本の製造業で大切にされてきた安全文化を、Llamaで次の世代につなぎたい。2日間での開発だったが、チームメイトと議論しながら、ほんの少し未来の“指差し呼称”の形を示せたのではないか」と振り返りました。

製造DX賞(賞金20万円)
チーム4:「Llama LAMA」(Live assembly and Maintenance Assistant)

製造DX賞は、組立作業をリアルタイムで支援する「ライブ組立マニュアルアシスタント」を開発したチーム4に贈られました。

ソーシャルインパクト賞(賞金20万円)
チーム7:教員AIサポートシステム「Class Llama」

ソーシャルインパクト賞を受賞したのは、教員の長時間労働問題に挑むチーム7でした。元高校教員のメンバーが自らの経験をもとに、指導記録や会議資料作成など、教師の「見えにくい業務負荷」に着目したアプリケーションを提案しました。

テクノロジーイノベーション賞(賞金20万円)
チーム10:「やさしい日本語」変換ツール

テクノロジーイノベーション賞は、行政文書などの難しい日本語を「やさしい日本語」に自動変換するツールを開発したチーム10が受賞しました。

Meta特別賞(賞金20万円)
チーム8:リスキリング支援「Llamas Socrates」

Meta特別賞に選ばれたのは、プログラミング学習やリスキリングを支援する「Llamaソクラテス」を提案したチーム8が受賞しました。

【審査員 プロフィール】

​岡崎直観
​東京科学大学 情報理工学院情報工学系  教授
​2007年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。東京大学大学院情報理工学系研究科・特任研究員、東北大学大学院情報科学研究科准教授を経て、2017年8月より現職。自然言語処理の研究に従事。言語処理学会理事、日本ディープラーニング協会(JDLA)理事。平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞、第15回船井学術賞、2016年度マイクロソフト情報学研究賞などを受賞。


シバタアキラ
​Weights & Biases Japan カントリーマネージャ
​起業家・データサイエンティスト・物理学博士。人工知能を使ったデータ・AI活用によるビジネス価値の創出を専門とし、幅広い分野にて、これまで数百社に及ぶ国内外企業のデータ・AIの利活用を実現してきた。機械学習自動化プラットフォームのDataRobot日本CEO、AIによる創造性の拡張をミッションとするQosmo, Inc.のCOOなどを歴任し、現在はサンフランシスコを拠点とし、AIエンジニアのための開発・運用プラットフォームを提供するWeights & Biasesの日韓カントリーマネージャー。


​庄司 昌彦
​武蔵大学 社会学部メディア社会学科 教授
武蔵学園 データサイエンス研究所 副所長
​2002年、中央大学大学院総合政策研究科博士前期課程修了。修士(総合政策)。国際大学GLOCOM准教授・主幹研究員を経て、2019年4月より現職。專門は情報社会学・情報通信政策。国際大学GLOCOM主幹研究員、東京大学空間情報科学研究センター客員教授、デジタル庁オープンデータ伝道師等も務める。共著に『RE-END 死から問うテクノロジーと社会』(2021年、ビー・エヌ・エヌ:人工知能学会AI ELSI賞 Perspective部門受賞)。


林 英俊
​製造DX協会 代表理事
株式会社エスマット 代表取締役
​コンピューターサイエンス修士、製造業中心の戦略コンサル(ローランドベルガー)、ECのプロダクトマネジメント(アマゾン)を経て、2014年にスマートショッピング創業。代表取締役として経営全般を舵取りしつつ、IoT x SaaSビジネス、Webメディア・D2Cビジネスの事業立ち上げなどグロース中心に実務も担う。製造とデジタルの交差点に立ち、製造DXを業界レベルで進めるための外部協業、日本全国のコミュニティ活動も積極展開。DX・IoT・在庫関連の講演・執筆・メディア発信も多数。ICCカタパルト優勝。重さの男。製造DX協会代表理事、三重大学リカレント教育の講師。


​三宅 俊毅
​DEEPCORE Inc. Senior Director, Investment.
​DEEPCOREで、投資業務を担当するとともに、KERNEL事業部長を務める。事業会社管理会計業務などを経て、UBS証券株式調査部にて株式セルサイドアナリスト、PwCにてM&Aアドバイザリー業務に従事。その後、EdTechスタートアップに参画し、IPOを想定した経営管理体制構築や資本提携先CVCへの出向・スタートアップ投資に従事。帰任後は、経営戦略室執行役員としてIPO後の既存事業バリューアップやM&Aターゲットの初期的調査、投融資先管理に従事する傍ら、JETRO EdTechアドバイザーとしても活動。2022年7月より現職。慶應義塾大学総合政策学部卒業。米国公認会計士


Christopher Dewan
​ソフトウェアエンジニア, Recommendation Systems, Meta
​Metaで10年以上AI開発に携わる。最先端のAI研究、Facebook・Instagramの機械学習システムの新機能開発、オープンソースのプロジェクトを多数担当。FacebookやInstagramの翻訳技術インフラ、OPT-175、MultiRay、PyTextの技術リーダー。現在はMetaの東京オフィスに所属し、InstagramとFacebookのコンテンツレコメンデーションチームでレコメンデーションシステムの開発に携わる。


Riandy Riandy
​Partner Engineer, Meta
​生成AIを専門とし、特に大規模言語モデル「Llama」ファミリーに携わる。2018年にMeta入社後は、Facebookの開発者プラットフォーム、ビジネスメッセージング、メタバースの初期開発を含む複数の重要プロジェクトで中核的な役割を果たす。直近はパートナーや開発者との連携を通じ、Llamaモデルを活用したイノベーティブな体験の構築を支援するなど、最先端AIソリューションの導入を推進し、プラットフォーム機能の強化と大規模なユーザー体験の向上に注力。

【協力パートナー団体】 
Cynthialy株式会社


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