Meta日本法人Facebook Japanは9月6日、「Llamaアイディアソン」を東京・CIC Tokyoにて開催しました。
本イベントは、生成AIの活用をテーマにしたピッチコンテストで、Metaが提供する大規模言語モデルLlama を活用した経済的・社会的インパクトをもたらすアイデアを募集し、その可能性を探ることを目的としています。アジア太平洋州地域で開催される取組みの一環として、日本大会が行われました。Grand Prize(最優秀賞)として200万円の賞金と、10月2日・3日にシンガポールで開催される決勝大会への出場権が、また、Innovation Award(優秀賞)として100万円の賞金が授与されました。
審査員は、以下の5名が務めました。(五十音順)
- 岡崎直観氏(東京工業大学情報理工学院教授)
- Chirstoper Dewan(Meta ソフトウェアエンジニア )
- シバタアキラ氏(Weights & Biases Japan カントリーマネージャー)
- 深田陽子氏(Sony Ventures, Investment Director)
- 三宅俊毅氏(DEEPCORE, Senior Director, Investment)
日本の課題への応用可能性が共有されたピッチセッション
本イベント開催にあたりMeta日本法人Facebook Japan 公共政策部本部長の泉谷晃は、MetaがAIモデルをオープンソースとして提供する理由には、開発者、Meta、そして社会全体に対して、「三方よし」のメリットがあることを挙げました。開発者は、Llamaをローカル環境にモデルをダウンロードし、自由にカスタマイズすることができること、そして開発者自身の大切なデータのコントロールを保つことができることなどをメリットとして挙げました。また、Metaにとっては、AIをビジネスに取り込みやすくなること、Llamaに親しんだ人材を惹きつけられることを挙げました。さらに、オープンモデルの透明性やコミュニティの集合知による開発は、安全性のより一層の向上につながると話しました。
続いて、経済産業省情報産業課情報処理基盤産業室の渡辺琢也室長から、生成AIの社会実装に向けた改善のサイクルを着実に進めていくことが重要であること、また、日本の創造的・共創的な文化や、生産性向上への切実なニーズをふまえ、Metaがオープンソースで公開しているLlamaが、日本で生成AIの開発に挑戦する人材の活動を加速させる可能性についてお話いただきました。
今回のピッチコンテストには、書類選考を経て選ばれた6社が参加し、製造業、農業、医療、教育、介護、製薬などの各分野におけるソリューションを発表しました。Grand Prize(最優秀賞)を受賞したのは株式会社ファースト・オートメーションで、2D図面から3DCADモデルを自動生成するサービスのアイディアを発表しました。Llamaを活用することで、図面の解析精度を向上させ、製造業のDXを推進するソリューションが評価されました。
Innovation Award(優秀賞)は、株式会社Recursiveが受賞しました。教育分野において、Llamaを用い、生徒一人ひとりに適した教材を自動生成し、個別に最適化された学習を提供するアイデアを発表しました。今後のリスキリングの必要性や重要性を踏まえ、Ed Techの領域に新たなイノベーションをもたらすソリューションとして評価されました。
イベントを総括し、Meta 日本法人Facebook Japan 公共政策部長の小俣栄一郎は、多様な背景を持った開発者の間で日本が抱える様々な課題が共有され、Llamaを使った想像力に富むソリューションの提案があったと振り返り、オープン・イノベーションの可能性が改めて確認できる機会になったと総括しました。また、本イベントが日本におけるLlamaコミュニティの拡大に向けた重要な一歩になることを期待していると述べました。
Metaは今後も開発者コミュニティ支援の一環として、経済的および社会的インパクトをもたらすLlamaのユースケースの創出とそのサポートに取り組んでまいります。
【審査結果】
Grand Prize : 株式会社ファースト・オートメーション
受賞コメント:CTO 田中健太氏
このような素晴らしい賞をいただいて、本当に感謝しております。
製造業において2Dから3Dに移行するという課題は、日本特有の課題と言えます。しかし、CADにはプログラミングの側面もあり、我々はCADのGit Hub Co-Pilotを目指すという形で世界的なプロダクトにしていければと考えています。
Innovation Award:株式会社Recursive
受賞コメント:CEO Tiago Ramalho氏
本日ご出席の皆様に感謝します。今後はビジネスモデルを作ること、そしてそれを皆に使ってもらえるようにすること、これを両立させていくというのがかなり大変な作業でもありますが頑張っていきたいと考えています。今日の参加者の皆さんと、ぜひコラボレーションなどができたらと思っています。
【参加企業:ピッチ内容詳細】
Pitch1:2D図面▶3DCAD
企業名:株式会社ファースト・オートメーション
Pitch2:Centeotl: AI-Agronomist Powered by Llama 3.1
企業名:SAL Innovations Inc.
Pitch3:外科医の書類業務負担を軽減する”Surgical Report Generatior”
企業名:Medical Dataway AG
Pitch4:FindFlow
企業名:株式会社Recursive
Pitch5:QX Engine – Llamaで実現する究極の会話 AI
企業名:株式会社Quixotiks
Pitch6:LLMを活用した科学データ管理システム
企業名:PITHIAS Technologies合同会社
【審査員 プロフィール】
岡﨑 直観氏
東京工業大学情報理工学院 教授
2007年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。東京大学大学院情報理工学系研究科・特任研究員、東北大学大学院情報科学研究科准教授を経て、2017年8月より現職。自然言語処理の研究に従事。言語処理学会理事、日本ディープラーニング協会(JDLA)理事。平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞、第15回船井学術賞、2016年度マイクロソフト情報学研究賞などを受賞。
Christopher Dewan
Meta ソフトウェアエンジニア
Metaで8年以上AI開発に携わる。最先端のAI研究、Facebook・Instagramの機械学習システムの新機能開発、オープンソースのプロジェクトを多数担当。FacebookやInstagramの翻訳技術インフラ、OPT-175、MultiRay、PyTextの技術リーダー。現在はMetaの東京オフィスに所属し、Instagramのコンテンツレコメンデーションチームでレコメンデーションシステムの開発に携わる。
シバタアキラ氏
Weights & Biases Japan カントリーマネージャー
起業家・データサイエンティスト・物理学博士。
人工知能を使ったデータ・AI活用によるビジネス価値の創出を専門とし、幅広い分野にて、これまで数百社に及ぶ国内外企業のデータ・AIの利活用を実現してきた。
機械学習自動化プラットフォームのDataRobot日本CEO、AIによる創造性の拡張をミッションとするQosmo, Inc.のCOOなどを歴任し、現在はサンフランシスコを拠点とし、AIエンジニアのための開発・運用プラットフォームを提供するWeights & Biasesの日韓カントリーマネージャー。
深田 陽子氏
Sony Ventures, Investment Director
ソニー株式会社(現在ソニーグループ株式会社)に新卒入社後、ソフトウェアエンジニアとしてB2Cの商品開発やB2Bの新規事業立ち上げをリードし、2020年にCVC部門に参画。現在は、ディープテックやクライメートテック領域のスタートアップ投資をグローバルに行っている。2022年には、GCVの「アジアのCVCで活躍する女性30人」、Forbes Japanの「日本のVC業界で活躍する女性15人」に選ばれる。
三宅 俊毅氏
DEEPCORE, Senior Director, Investment
DEEPCOREで投資を担当。事業会社管理会計、UBS証券株式調査部で株式セルサイドアナリスト、PwCでM&Aアドバイザリー業務に従事。EdTechスタートアップでIPO準備やスタートアップ投資、経営戦略室執行役員として事業バリューアップや投融資先管理を行う傍らJETRO EdTechアドバイザーも務めた。2022年7月より現職。慶應義塾大学総合政策学部卒業、一橋大学MBA在籍中。米国公認会計士。
【協力パートナー団体】
CIC Institute、DEEPCORE、Tokyo AI